家族信託シリーズ第3回:障害のある子どものための家族信託

    2025年10月31日
    • 生前相続のご準備

    〖現在の状況〗

    ◆ 家族構成:父、母、長男、二男(障害あり)

    〖ご家族の悩み〗

    すでに二男の判断能力が低下した状態で、父が遺言書を遺さずに死亡した場合、遺された相続人たちはどうなるのか?

    何の対策もしなかった場合、方法は以下の2つに限られる。

    ① 二男に成年後見人を付けて、選任された成年後見人が二男の代わりに遺産分割協議に参加する。
    ※ 但し、法定後見制度の利用となり、二男が死亡するまで毎月3~6万円の後見人報酬が発生する。

    ② 法定相続分で遺産分割をする。
    ※ 法定後見の場合、二男の法定相続分を確保しなければなりません。。

    〖解決策〗

    上記の①②にならないように「受益者連続型信託」の応用パターンを活用する。

    〖設計プラン方針〗

    経済的負担や柔軟性が乏しい成年後見制度の利用を回避しつつ、障害がある二男の生活を確保する。

    〖プラン内容〗

    ・ 委託者 / 財産を託す人:父
    ・ 受益者 / 利益を受ける人:父
    ・ 受託者 / 財産を託される人:長男

    父に相続が発生した後、ここで信託を終了させずに(通常は委託者兼受益者が死亡すれば信託終了)、「①父の持つ受益権、②委託者としての地位」を二男に相続させる。

    結果、障害があり、すでに意思能力を失っている二男が、父が組成した「家族信託の流れに後から乗ることができる」というもの。

    二男は信託メリットを享受することができ、長男は引き続き「二男のために」財産管理をする。

    ※ 通常、すでに意思能力を失っている二男が信託契約の当事者にはなれないが、組成した契約当事者の「父の受益権」と「委託者としての地位」を相続させられれば、二男も委託者兼受託者になれる。

    家族信託シリーズ第2回:親の認知症対策としての家族信託

    2025年10月28日
    • 生前相続のご準備

    ---この記事では、親の認知症対策として家族信託を活用する方法について解説します。---

    親が認知症になったときに生じる財産管理の問題や、家族信託と成年後見制度の違い、そして早めに備えることの大切さがわかります。

    • 認知症になると資産がどうなる? 財産管理が困難になる理由とリスク

    • 家族信託とは何か? 認知症対策としての仕組みとメリット

    • 成年後見制度との違い:それぞれの特徴と家族信託を選ぶメリット

    親が認知症になると財産管理はどうなる?

    高齢の親が認知症になって判断能力が低下すると、銀行口座の管理や不動産の売却など 財産管理 が思うようにできなくなります。

    本人が契約や手続きを行えないため、家族であっても勝手に預貯金を動かしたり資産を処分したりできず、いわゆる「資産が凍結される」状態になってしまいます。

    こうした場合に備えて利用されるのが成年後見制度ですが、この制度では家庭裁判所を通じて後見人を選任し、本人に代わって財産管理を行います。

    後見人には親族が選ばれることもありますが、場合によっては第三者の専門家(弁護士や司法書士など)が選ばれることもあります。

    後見人は裁判所の監督下で財産を管理し、毎年その収支を報告する義務があります。

    成年後見制度を利用すれば、認知症の親の財産管理は一応可能になります。しかし、後見人が付くと本人の財産処分は非常に制約されます

    例えば、親名義の不動産を売却したり、生前贈与をしたりするには後見人だけでなく裁判所の許可も必要です。

    家族が「親のためによかれ」と思う資産の活用や相続税対策(生前贈与など)も、後見開始後は実質的に難しくなってしまいます。

    つまり、認知症発症後に後見制度に頼ると、思うような財産活用ができなくなるリスクが高いのです。

    家族信託とは?認知症対策としての仕組み

    そこで注目されているのが 家族信託 です。家族信託とは、家族間で財産を預けて管理・運用してもらう仕組みのことです。

    例えば、認知症対策としては、親御さん(財産を持つ人)が元気なうちに、自分の財産を信頼できる家族(子どもなど)に託して管理してもらう契約を結びます。

    信託契約を結ぶと、預けられた財産の名義は受託者(財産を管理する家族)に移りますが、その財産は信託の目的に沿って親のために使われます。

    親御さんは引き続き受益者として財産から利益を受け取ることができ、必要な費用を子どもに管理してもらえるのです。

    家族信託のメリットは、親の判断能力が低下した後でもスムーズに財産を管理・処分できる点にあります。

    信託によって受託者に権限を与えておけば、たとえ親が認知症になっても、不動産の売却や介護費用の捻出などを子どもが柔軟に行えます。

    成年後見制度のように都度裁判所の許可を得る必要もなく、親の生活や介護のために資産を有効活用できるのが大きな利点です。

    さらに家族信託では、親が亡くなった後の資産承継先も指定しておくことができます。

    たとえば「親が亡くなったら信託財産を配偶者や子どもに引き継ぐ」と信託契約に定めておけば、遺言書のような役割も果たします。

    これにより、認知症対策と同時に将来的な相続対策にもなり、一石二鳥の制度と言えるでしょう。

    家族信託と成年後見制度の違い

    成年後見制度と家族信託の大きな違いは、事前対策か事後対策かという点です。

    成年後見制度は認知症などで判断能力が失われた「後」で家庭裁判所に申し立てて利用する制度ですが、

    家族信託は本人が元気で意思判断ができるうちに「前もって」準備する制度です。

    この違いが、財産管理の自由度に大きく影響します。以下に主な違いをまとめます。

    • 手続きの違い:成年後見は裁判所での手続きが必要で、後見人の選任や定期報告など煩雑です。一方、家族信託は家族間の契約によって成立し、公証役場での公正証書作成などは必要ですが、裁判所の関与は原則ありません。

    • 財産処分の自由度:後見人制度では、資産の処分や運用には慎重な制限があります【たとえば、不動産売却には裁判所の許可が必要】。家族信託では、信託契約で定めた範囲内で受託者が判断して資産を動かせるため、状況に応じた柔軟な資産活用が可能です。

    • 費用や負担:成年後見では専門家が後見人になる場合、報酬が発生し毎年の報告事務も伴います。家族信託でも契約書作成に専門家のサポートを依頼すれば費用はかかりますが、信託が始まってからの継続的な報告義務はありません。

    こうした違いから、親の財産管理を家族の裁量で行いたい場合は家族信託の方が適していると言えます。

    ただし、家族信託は親が十分な判断能力を有する間にしか契約できません。認知症がかなり進行してしまった後では、もはや信託契約を結ぶことはできず、後見制度に頼らざるを得なくなってしまいます。

    家族信託を検討する際のポイント

    家族信託を活用するには早めの準備が肝心です。 親に認知症の兆候が出る前から、家族で話し合って対策を立てておくことをおすすめします。

    信託契約の内容(誰を受託者にするか、どの財産を信託するか、将来の受益者を誰にするか等)を家族でしっかり決める必要がありますので、専門家に相談しながら進めると安心です。

    契約内容によっては税金や他の相続対策との関係も出てきますので、総合的に検討することも重要です。

    しかし一度仕組みを整えておけば、親御さんが認知症になった後もスムーズに財産管理ができ、親の生活や介護に必要なお金を滞りなく使えるようになります。

    結果として、ご家族にとって経済的・精神的な負担の軽減につながるでしょう。

    まとめ:認知症対策は「今」がタイミング

    親の認知症による財産管理の問題に備えるには、家族信託という方法が有効であることを見てきました。

    成年後見制度と比べて事前の手間はありますが、その分、実際に認知症になった際には柔軟で円滑な財産管理が可能になります。

    大切なのは「元気なうちに備える」ことです。親御さんやご自身の将来に不安がある方は、ぜひ早めに家族信託の活用を検討してみてください。

    認知症になってからではできない対策だからこそ、今のうちに準備を進めておくことが家族の安心につながります。

    【連載:家族信託について】第1回:相続対策としての家族信託

    2025年10月11日
    • 生前相続のご準備

    はじめに

    親の高齢化が進む中、「もしもの時」に備えた相続対策がますます重要になっています。

    近年注目を集めているのが 「家族信託」 という仕組みです。

    家族信託とは、信頼できる家族に自分の財産の管理や処分を託し、あらかじめ決めた目的に沿って運用・承継してもらう制度のことです。

    例えば、「親の判断能力が低下した後も子どもが代わりに財産を管理できるようにしたい」

    「自分が亡くなった後、配偶者に財産を残し、その配偶者が亡くなった後は子どもに引き継ぎたい」といった希望を叶えることができます。

    本記事(第1回)では、相続対策として家族信託がなぜ注目されているのか、その基本的な仕組みや従来の遺言との違い、具体的な活用の流れ、

    そして地域(茅ヶ崎・寒川)の高齢化事情をふまえたニーズや司法書士に依頼するメリットについて、初心者の方にもわかりやすく解説します。

     

    なぜ家族信託が相続対策として注目されているのか

    超高齢社会の日本では、認知症などで判断能力が低下する高齢者の増加や、相続をめぐる家族間トラブルが社会問題となっています。

    茅ヶ崎市では高齢化率が約27%と4人に1人以上が65歳以上という状況で、寒川町も同程度の高齢者割合(今後30%超とも予想)となっており、親世代の財産管理や相続の備えは地域でも大きな関心事です。

    こうした背景から、家族信託は「生前にできる相続対策」として注目されています。

    従来、親の財産承継には遺言書を用意するケースが一般的でしたが、遺言はあくまで「亡くなった後」に効力を発揮するものです。

    そのため、親が存命中に認知症になった場合には遺言書では財産を動かせず、預貯金の引き出しや不動産の処分ができなくなってしまいます(いわゆる「資産の凍結」状態)。

    家族信託を利用すれば、親が元気なうちに信頼できる子どもを受託者(財産を管理する人)に指定し、将来親の判断能力が低下しても子どもが代わりに財産管理・処分できるよう準備しておくことができます。

    これは成年後見制度に比べて柔軟で、家族の意思に沿った資産管理ができるため、認知症対策としても有効です。

    また、家族信託は相続の争い防止にも寄与します。信託した財産は法律上「受託者名義の信託財産」となるため、委託者(親)が亡くなっても遺産分割協議の対象になりません。

    遺言書があっても相続人間で話し合いが必要な場合がありますが、家族信託であらかじめ財産の承継先を定めておけば、指定された受益者にスムーズに財産を引き継ぐことができます。

    親御さんとしても「自分の死後、子どもたちに余計な手間や揉め事をかけたくない」というニーズがあり、家族信託はその安心材料となります。

     

    遺言との違いと相続税対策との関係

    家族信託と遺言の主な違いを整理してみましょう。

    効力の発生時期: 遺言は本人死亡後に効力を発揮しますが、家族信託は契約を結んだ時点(生前)から効力があります。

    =つまり生前から財産管理・承継の仕組みを動かせる点が大きな違いです。

    判断能力低下への対応: 遺言では本人が認知症などで判断能力が低下してしまうと新たに作成・変更できません。

    一方、家族信託は本人が元気なうちに契約しておけば、判断能力低下後もその契約に沿って財産管理が継続されます(後見人を立てる手間も減らせます)。

    二次相続の指定: 遺言は基本的に亡くなった時点で誰に遺産を渡すかまでしか決められません。例えば「自分が亡くなったら配偶者へ」という指定までです。

    その配偶者が亡くなった後の承継先(次の世代)までは遺言では指定できません。これに対し家族信託なら、「自分 → 配偶者 → 子ども」といった二段構えの承継先まで生前に決めておくことが可能です。

    このように家族信託には遺言の機能も含まれており、二次相続以降の資産承継までコントロールできる点が大きな特徴です。

    財産承継の手続き: 家族信託では信託財産が遺産分割協議不要で受益者に引き継がれます。

    遺言があっても遺留分(法律上保障された最低限の取り分)を侵害する内容の場合、相続人から異議を唱えられる可能性がありますが、家族信託でも遺留分請求は行使され得るので、その点の配慮は必要です。

    とはいえ、信託した財産自体は遺言よりも確実に指定受益者へ渡せるため、相続手続きを簡便にする効果があります。

    相続税対策との関係性についても触れておきます。家族信託を利用すると名義が受託者(子どもなど)に移るため、「節税になるのでは?」と思われるかもしれません。

    しかし結論から言えば、家族信託自体が直接的な相続税の節税対策になるわけではありません。

    信託を組成しただけでは相続税評価額が下がったり税負担が軽減されたりする効果は基本的にありません。

    たとえば親が受益者(財産から利益を受ける人)である家族信託の場合、親が亡くなれば結局その時点で信託財産は相続税の課税対象となります。

    とはいえ、家族信託には間接的に有利な点もあります。

    契約の形態によっては贈与税や不動産取得税が生じない形で財産を動かせる(委託者=受益者とすれば贈与とみなされず、信託登記による不動産名義変更でも不動産取得税は非課税)ため、

    無用な税コストを増やさずに資産承継の準備ができます。

    また、資産が凍結されず計画通り承継できれば、相続発生後に慌てて手続きをしたり財産処分に時間がかかって無駄な費用が発生したりするのを防ぐことができます。

    つまり家族信託は節税というより「円滑な相続」のための制度であり、必要に応じて生命保険や生前贈与など他の相続税対策と組み合わせて活用するのが望ましいでしょう。

     

    家族信託を活用する具体的な流れ

    「家族信託に興味はあるけれど、実際には何をするの?」という方向けに、大まかな手続きの流れを紹介します。

    初めての方でもイメージしやすいよう、ステップごとに整理します。

    ①家族で目的や方針を話し合う
    まずは家族信託を利用する目的を明確にします。

    例えば「認知症対策として資産凍結を防ぎたい」

    「自分(親)が亡くなった後、配偶者が安心して暮らせるようにし、その配偶者の死後は子どもに財産を承継させたい」

    「将来、障がいのある子の生活資金を確保したい」

    「田舎の実家や土地を将来空き家にせず有効活用したい」など、ご家庭によって様々なニーズがあるでしょう。

    親御さん本人と子世代でしっかり話し合い、どんな財産を誰のためにどう管理・承継したいか希望を共有することが第一歩です。

    ②信託契約の内容を設計する
    次に、家族信託の具体的な設計を行います。信託契約では以下のようなポイントを決めます。

    誰が委託者(財産を託す人=通常は親)となり、誰を受託者(財産を管理する人=通常は子ども等)とするか。受益者(財産から利益を受ける人)は誰か。

    信託の目的を明確に定める(例:「委託者の介護費用や生活費に充てるため」「委託者死亡後に配偶者の生活保障をするため」など)。

    どの財産を信託の対象とするか(現金、不動産、有価証券など具体的に決定)。

    受託者にどのような管理・処分権限を与えるか(不動産を売却してよいか、資金をどのように運用するか等の範囲)。

    信託契約の期間や終了事由を定める(例えば「委託者が亡くなったら信託終了」など)。終了後、その財産を最終的に誰に引き継ぐか(残余財産の帰属先)も決めておきます。

    必要に応じて信託監督人や受益者代理人を置く(受託者の行為をチェックする第三者を設けることで不正防止や公平性確保ができます)。

    これらを家族の状況に合わせてオーダーメイドで決めていきます。決める項目が多く難しく感じるかもしれませんが、後述する専門家(司法書士等)に相談すれば適切なプランを提案してもらえます。

    ③信託契約書の作成
    設計した内容をもとに、信託契約書を作成します。

    契約書は法律上必ずしも公正証書にする必要はありませんが、後々のトラブル防止や金融機関での信託専用口座の開設手続きのためにも公正証書で作成することが望ましいです。

    契約書のひな形はインターネット上にもありますが、各家庭の事情に合わせて細かく調整する必要があります。

    条項のミスや抜け漏れがあると意図した効力が得られなくなる可能性もあるため、専門家にチェック・作成してもらうのがおすすめです。

    ④契約の締結(公正証書化)
    内容が固まったら、公証役場で信託契約の公正証書を作成し、契約を正式に締結します。公証人に契約内容を読み上げてもらい、委託者・受託者が署名押印して成立です。

    ここから信託がスタートします。

    不動産がある場合は名義変更登記
    信託財産に不動産が含まれる場合、契約締結後できるだけ早く不動産の信託登記(名義変更)を行います。

    具体的には、委託者から受託者への名義変更を法務局に申請し、登記簿上に「〇〇信託」といった形で信託が設定されたことを明記します。

    この登記をしておくことで、後々第三者にも信託の効力を主張でき、不動産売却時などの手続きもスムーズになります。

    信託専用の銀行口座を開設
    信託財産に預貯金が含まれる場合、受託者は自分の財産と信託財産を分けて管理する義務があります。

    そのため、信託契約にもとづいた信託専用口座(信託口口座)を銀行で開設します。

    口座名義は「委託者〇〇・受託者〇〇・信託口」といった形式になり、受託者が信託財産を管理・運用するための専用口座です。

    最近は信託口口座に対応する金融機関も増えていますが、万一難しい場合は銀行に相談し、通常の受託者名義口座を信託専用として扱う方法もあります。

     

    以上が基本的な流れです。

    契約成立後は、受託者(子ども)が契約内容に従って親の財産を管理・運用します。

    必要に応じて不動産を売却して介護費用に充てたり、信託専用口座から親の施設利用料を支払ったりしていきます。

    信託期間が終了(例えば親が亡くなった時)したら、契約で定めた受益者や残余財産受取人に財産を引き継いで完了です。

     

    茅ヶ崎・寒川地域の高齢化事情と家族信託の具体的ニーズ

    茅ヶ崎市や寒川町といった地域では、高齢者の割合が高く、今後も一人暮らしの高齢者や認知症患者の増加が見込まれます。

    そうした地域事情をふまえると、家族信託には次のような具体的ニーズがあります。

    認知症による資産凍結の防止: 親が認知症を発症すると、銀行口座の凍結や不動産の売却が自由にできなくなり、介護費用の捻出や資産処分が滞る恐れがあります。

    茅ヶ崎・寒川エリアでも、高齢の親を抱える子世代にとって「いざという時に備えたい」という声は多く、家族信託で早めに資産管理のバトンタッチをしておくことに大きなメリットがあります。

    空き家対策・実家の処分: 親が介護施設に入ったり亡くなったりして実家が空き家になるケースが増えています。

    この地域でも空き家問題は深刻化しつつあり、放置すれば固定資産税の負担や防犯・景観上の問題も生じます。

    家族信託を活用しておけば、受託者である子どもがタイミングを見て実家を売却したり賃貸に出したりと柔軟に処分・活用できます。

    信託契約で売却益の使途(親の介護費や維持管理費など)も定められるため、親の生活を支えつつ資産を有効活用することが可能です。

    二次相続への備え: 茅ヶ崎や寒川には長年地域に住み続けるご夫婦も多く、「自宅や土地を自分たちの死後は子どもに確実に残したい」という希望もよく聞かれます。

    特に子ども世代が複数いる場合、誰が実家を引き継ぐか、他の子には代わりに何を渡すかなどを巡って揉めるリスクもあります。

    家族信託であれば、配偶者が亡くなった後の承継先(長男に不動産、次男に預金…など)まで明記できるため、将来の相続争いを未然に防ぎ、公平な分割を実現しやすくなります。

    親の想いの実現: 高齢化が進む地域では、介護や障がいを抱える家族の話題も避けられません。

    「亡くなった後も障がいのある娘の生活を保障したい」「孫の代まで学費の一部を援助したい」といった親御さんの想いを叶える手段としても、家族信託は活用されています。

    このようなケースでは信託契約に給付の条件や期間を定め、親亡き後も受託者が定期的に支援を行う仕組みにすることが可能です。

    以上のように、茅ヶ崎・寒川といった高齢者の多い地域では、家族信託が「備えあれば憂いなし」の安心策として具体的な効果を発揮します。

    子世代にとっても、親の財産について早めに話し合っておくきっかけとなり、いざという時に慌てずに済むという利点があります。

     

    おわりに

    家族信託は、親世代・子世代双方にとって新しい相続対策の選択肢として広がりつつあります。

    従来の遺言や成年後見制度では対応しきれなかった課題に柔軟に対処でき、財産の管理・承継を家族の希望通りにデザインできる点が大きな魅力です。

    一方で、制度が新しく専門知識も要するため、メリット・デメリットを正しく理解した上で進めることが大切です。

     

    この記事では相続対策としての家族信託の概要を解説しました。最後までお読みいただきありがとうございます。

    次回(第2回)は「認知症リスクに備える家族信託」をテーマに、認知症対策として家族信託を活用するポイントを詳しく紹介します。

    親御さんの将来に不安を感じている方は、ぜひ引き続きご覧ください。備えを万全にして、安心できる相続・財産管理を実現していきましょう。