不動産を生前贈与していた場合の相続登記への影響とは?

「父が生前にこの土地は私のものだと言っていた」

「生前に贈与契約書を交わしたけど、登記はしていなかった」

このようなご相談は、相続登記の現場でよく見受けられます。

不動産の生前贈与は、相続対策として有効な手段のひとつですが、登記を済ませていないと、

相続財産として扱われてしまう可能性があります。

今回は、生前贈与した不動産に関する相続登記の取り扱いと注意点について解説します。


✅ 生前贈与したはずの不動産が「相続対象」になる?

被相続人が生前に不動産を他の家族へ譲り渡す意思を示していたとしても、

贈与の登記を済ませていない場合、その不動産の名義は被相続人のままです。

この場合、法的にはその不動産は相続財産とみなされ、相続登記の対象となります。

● 贈与契約書がある場合でも、登記をしていなければ不十分
● 相続人全員による遺産分割協議が必要となる可能性がある
● 遺留分を侵害していると他の相続人から請求される場合もある

贈与したつもりでいても、**法務局の登記簿上は「被相続人名義の不動産」**である以上、登記の処理が必要になります。


✅ 贈与契約と登記の関係とは?

不動産の贈与は、契約と登記の両方が完了して初めて「第三者に対抗できる権利」として成立します。

つまり、たとえ贈与契約書が存在していても、名義変更(所有権移転登記)がされていない場合、

対外的には「贈与されていない」と見なされるのです。

● 相続人の一人が贈与を受けたつもりでも、他の相続人がその事実を知らない場合、紛争になるリスクが高まります。
● 贈与の証拠が不十分な場合、相続財産として処理される可能性が極めて高いといえます。


✅ では登記していれば問題ないのか?

登記が完了していれば、その不動産は相続財産には含まれず、原則として相続登記の対象にはなりません。

しかし以下のような点には注意が必要です。

● 生前贈与が行われた日付や経緯が不自然であれば、遺留分侵害の対象とされる可能性がある
● 相続人が異議を唱えた場合、贈与の真意が争点になることもある
● 不動産の評価額が大きい場合は、贈与税の申告漏れが指摘される可能性もある

たとえ登記されていても、法的なトラブルを完全に避けるには、遺言や贈与契約の整備も含めた総合的な対策が必要です。


✅ 生前贈与された不動産に関する相続登記の実務

生前贈与された不動産でも、登記されていない場合は、次のような流れになります。

● 名義が被相続人のまま → 相続人全員での協議が必要
● 協議がまとまらない場合 → 家庭裁判所による調停や審判が必要になることも
● 贈与を主張する側は、贈与契約書や証拠資料の提示が必要

※相続登記の申請書においては、登記簿上の名義人が亡くなっている以上、法定相続または遺産分割による移転登記として処理することになります。


✅ 専門家に相談するメリット

不動産の生前贈与と相続登記が関わるケースは、事実関係の確認・法的主張・証拠の整備など、慎重な対応が求められます。

司法書士にご相談いただくことで、次のような対応が可能です。

● 登記簿・契約書・関係資料の精査
● 相続人間の調整に関するアドバイス
● 必要書類の収集と登記申請の代理
● 将来の紛争リスクに配慮した対応策の提案


✅ まとめ:贈与の「つもり」では相続登記は避けられない

✅ 不動産の生前贈与は、登記をしていなければ相続財産とみなされる
✅ 贈与契約書だけでは不十分で、名義変更が必要
✅ 相続人間のトラブルや遺留分請求のリスクもある
✅ 贈与の意図を確実に反映するには、登記と証拠の整備が不可欠
✅ 専門家に相談し、登記・契約・税務を含めた対策を講じることが重要

生前贈与をしたつもりでも、登記が済んでいなければ「ただの口約束」として扱われてしまう可能性があります。

弊所では、不動産の贈与に関する登記手続きや、相続登記との関係性についても丁寧にサポートしております。

お困りの際は、ぜひ弊所にご相談ください。