住所変更登記はもう義務化|期限・過料・スマート変更登記を司法書士が解説

    2026年9月7日
    • 土地・家屋の名義変更

    不動産を所有したまま引っ越した方へ。

    住民票の転居届を出しても、不動産の登記簿に記録された所有者の住所が、当然に書き換わるわけではありません。

    2026年4月1日から、不動産の所有者について住所や氏名・名称に変更があった場合の「住所等変更登記」が義務化されました。

    結論を先にまとめると、期限は次のとおりです。

    • 2026年4月1日以後に住所・氏名等が変わった場合:変更日から2年以内

    • 2026年3月31日以前に変更しており、登記が旧情報のままの場合:原則として2028年3月31日まで

    正当な理由なく期限内に登記をしない場合、5万円以下の過料の対象となる可能性があります。

    一方、個人の所有者は、無料の「検索用情報の申出」をしておくことで、法務局が住所等の変更を確認し、本人の了解を得たうえで職権登記を行う「スマート変更登記」を利用できます。

    この記事では、義務の内容、期限、過料までの流れ、スマート変更登記と自分で申請する住所変更登記の違い、今すぐ確認した方がよいケースを、司法書士が整理します。

    住所等変更登記の義務化とスマート変更登記を解説する司法書士木村光太朗

    住所等変更登記とは

    不動産の登記簿には、土地や建物の所有者の氏名・名称と住所が記録されています。

    所有者が引っ越したときは「所有権登記名義人住所変更登記」、婚姻などで氏名が変わったときは「所有権登記名義人氏名変更登記」などにより、登記簿の情報を現在の情報へ変更します。

    法人名義の不動産について、本店や主たる事務所、名称が変わった場合も対象です。

    2026年4月1日からは、所有権の登記名義人に住所・氏名・名称の変更があったとき、原則として変更日から2年以内に変更登記を申請することが法律上の義務となりました。

    これは相続登記の義務化とは別の制度です。

    相続登記と住所等変更登記の違い

    • 相続登記
      対象:相続によって不動産を取得した相続人
      期限:原則として、自己のために相続が開始し、不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内
      過料:正当な理由なく申請しない場合、10万円以下

    • 住所等変更登記
      対象:登記名義人の住所・氏名・名称が変わった所有者
      期限:原則として変更日から2年以内
      過料:正当な理由なく申請しない場合、5万円以下

    相続登記を済ませて現在の所有者名義にした後、その所有者が転居した場合には、住所等変更登記の問題が別に生じます。

    義務化より前に引っ越していた場合の期限

    今回の義務化は、2026年4月1日以後の引っ越しや氏名変更だけを対象とするものではありません。

    2026年3月31日以前に住所や氏名等が変わっており、登記簿が古い情報のままの場合も対象になります。この場合は、原則として2028年3月31日までに対応する必要があります。

    例えば、2018年に自宅を購入し、2022年に転居したものの、売却予定がなかったため登記を変更していない方も確認が必要です。

    転居届を市区町村へ提出したことと、登記簿の住所を変更したことは別の手続です。まずは登記事項証明書などで、登記簿上の住所が現在の住所と一致しているか確認してください。

    期限を過ぎると、すぐ5万円を払うのか

    「2年を過ぎた瞬間に、自動的に5万円を請求される」という制度ではありません。

    法務省のQ&Aでは、登記官が義務違反を把握した場合、まず義務を負う方へ登記をするよう催告書を送付する運用が示されています。

    催告を受けても正当な理由なく登記をしない場合、裁判所への過料通知の対象となる可能性があります。

    過料を科すか、金額をいくらにするかは、最終的には裁判所が判断します。

    したがって、法律上の結論は「正当な理由なく期限内に申請しなければ5万円以下の過料の対象となり得る」であり、「期限を1日過ぎれば必ず5万円」という意味ではありません。

    ただし、催告を待ってよいわけではありません。

    売却、贈与、住宅ローンの借換えや抵当権抹消などを予定している場合、登記名義人の住所が現在の住所とつながらなければ、先に住所変更登記が必要になることがあります。

    早めに確認する方が安全です。

    スマート変更登記とは

    スマート変更登記は、法務局が職権で住所・氏名の変更登記を行う仕組みです。

    個人の所有者があらかじめ「検索用情報の申出」をすると、法務局が住民基本台帳ネットワークの情報と照合し、住所等の変更を把握します。

    その後、所有者本人の了解を得たうえで、登記官が職権で変更登記を行います。

    職権登記が行われれば、住所等変更登記の義務は履行したことになります。

    重要なのは、検索用情報を申し出た瞬間に、将来の変更が無条件で自動登記されるわけではないという点です。

    法務局から職権登記の可否について確認があったときは、その内容を確認して対応する必要があります。

    検索用情報として申し出る主な情報は、次のとおりです。

    • 氏名

    • 氏名の振り仮名

    • 住所

    • 生年月日

    • メールアドレス

    氏名の振り仮名、生年月日、メールアドレスは検索・連絡のための情報であり、そのまま不動産の登記事項として公開されるものではありません。

    すでに不動産を所有している方は、法務省の「かんたん登記申請」からオンラインで申し出るか、申出書を管轄の登記所へ提出・送付する方法があります。

    検索用情報の申出自体は無料です。

    スマート変更登記と通常の申請はどう使い分けるか

    スマート変更登記は便利ですが、すべての方が「何もしなくてよい」制度ではありません。

    スマート変更登記を検討しやすい方

    • 現在の登記情報に問題がなく、将来の転居に備えたい

    • 国内に複数の不動産を持っており、今後の変更漏れを防ぎたい

    • すぐに売却や担保設定などを行う予定がない

    通常の住所変更登記を早めに検討した方がよい方

    • すでに登記簿の住所が古い

    • 近く不動産を売却、贈与する予定がある

    • 住宅ローンの借換え、追加融資、抵当権抹消などを予定している

    • 複数回転居しており、登記簿上の住所から現住所までのつながりが複雑

    • 旧住所と現在の氏名・住所の一致を示す書類がそろうか不安

    • 法務局から案内や催告を受け取った

    職権登記が行われる時期を前提に取引日程を組むべきではありません。

    急ぐ事情がある場合は、自ら住所変更登記を申請する方法を検討します。

    自分で住所変更登記をする場合の費用と書類

    通常の住所変更登記を自分で申請する場合、登録免許税は原則として不動産1個につき1,000円です。

    土地1筆と建物1棟であれば、合計2個として2,000円が基本です。

    区画整理、住居表示の実施、行政区画の変更など、変更原因によっては登録免許税の取扱いが異なる場合があります。

    必要書類は状況によって異なりますが、一般には、登記簿上の住所から現在の住所までのつながりを確認できる住民票、住民票の除票、戸籍の附票などを使用します。

    転居回数が多い場合や保存期間の経過により公的書類だけで住所の沿革をつなげられない場合は、追加資料を含めて個別に検討します。

    この点は法令上の申請義務とは別に、登記実務上、登記名義人が同一人物であることをどの資料で確認できるかという問題です。

    まず5分でできる確認

    次の順番で確認すると、対応方針を整理しやすくなります。

    1. 所有している土地・建物を洗い出す

    2. 登記事項証明書等で所有者の住所・氏名を確認する

    3. 現在の住所・氏名と違う不動産を分ける

    4. 売却、贈与、借換えなど今後の予定を確認する

    5. 検索用情報の申出で備えるか、通常の変更登記を先に行うか決める

    不動産の所在地を漏れなく把握できているか心配な場合には、2026年2月2日に始まった所有不動産記録証明制度なども検討材料になります。

    ただし、検索条件と登記簿上の氏名・住所が一致しないと結果に出ない可能性があるため、固定資産税の納税通知書、権利証・登記識別情報通知なども併せて確認することが大切です。

    司法書士に相談できること

    司法書士は、住所・氏名変更登記の申請代理や申請書類の作成を業務として行うことができます。

    弊所では、次のような点を確認しながら手続を整理します。

    • 登記簿上の住所・氏名と現在の情報の確認

    • 必要な住民票、戸籍の附票等の検討

    • 複数回の転居や旧姓がある場合の住所・氏名の沿革確認

    • 所有不動産ごとの申請先と登録免許税の確認

    • 売却、贈与、相続登記、抵当権関係手続との順序整理

    • 検索用情報の申出を含む今後の変更漏れ防止

    茅ヶ崎市、藤沢市、寒川町、平塚市など湘南地域で、不動産の登記住所が古いままか分からない方は、

    登記事項証明書、権利証または登記識別情報通知、固定資産税の納税通知書、現在の住民票など、お手元にある資料をお持ちください。

    すべてそろっていなくても、必要な確認から整理します。

    まとめ

    2026年4月1日から、住所等変更登記はすでに義務化されています。

    • 施行後の変更は、原則として変更日から2年以内

    • 施行前の変更で未登記の場合は、原則として2028年3月31日まで

    • 正当な理由なく対応しない場合は、5万円以下の過料の対象となる可能性がある

    • 個人は、無料の検索用情報の申出によりスマート変更登記を利用できる

    • 売却や融資などを急ぐ場合は、職権登記を待たず通常の申請を検討する

    まずは「登記簿に今の住所が載っているか」を確認することが出発点です。

    ご自身のケースで、スマート変更登記への備えでよいのか、現在の住所変更登記を先に申請した方がよいのか判断が難しい場合は、木村光太朗司法書士事務所へご相談ください。

    ・【住所変更登記について相談する

    よくある質問

    Q1. 住民票を移せば、不動産の登記住所も自動で変わりますか?

    検索用情報の申出をしていない場合、住民票の転居届だけで登記簿が当然に書き換わるわけではありません。

    検索用情報を申し出た場合も、法務局が変更を把握し、本人の了解を得て職権登記を行う流れです。

    Q2. 2026年4月1日より前に引っ越していた場合も対象ですか?

    対象です。施行前の変更が未登記の場合は、原則として2028年3月31日までに対応する必要があります。

    Q3. 期限を過ぎると必ず5万円の過料ですか?

    必ず5万円になるわけではありません。正当な理由なく義務に違反した場合に5万円以下の過料の対象となり得ます。

    法務省は、登記官が義務違反を把握した場合、まず催告する運用を示しています。

    Q4. スマート変更登記は無料ですか?

    利用の前提となる検索用情報の申出は無料です。

    法務局が職権で住所等変更登記を行う場合も、本人が通常の登記申請をする場合の登録免許税とは取扱いが異なります。

    Q5. 土地と建物の両方を持っています。通常申請の登録免許税はいくらですか?

    原則として不動産1個につき1,000円です。土地1筆と建物1棟であれば、基本は合計2,000円です。

    変更原因等により取扱いが異なることがあります。

    Q6. 近く自宅を売却します。スマート変更登記を待てばよいですか?

    売却日程がある場合は、職権登記の時期を前提にせず、通常の住所変更登記を先に申請する必要がないか確認するのが安全です。

    Q7. 相続登記前に亡くなった方の住所が古い場合は、住所変更登記が必要ですか?

    相続登記では、亡くなった方と登記名義人が同一人物であることを、住民票の除票や戸籍の附票等で確認します。

    通常の住所変更登記を別途申請するかどうかは相続登記と同じではなく、事案に応じて必要書類を判断します。

    参考資料

    公開日・最終確認日:2026年9月7日

    執筆・監修:司法書士 木村光太朗(木村光太朗司法書士事務所)

    相続土地国庫帰属制度は実際に使える?国庫帰属3,008件―2026年最新統計を司法書士が解説

    2026年8月31日
    • 相続手続き

    「親から相続した山林が遠方にあり、管理に行けない」

    「使う予定のない農地や空き地を、子どもに残したくない」

    このような悩みを抱えている方にとって、相続した土地を国に引き渡すことができる「相続土地国庫帰属制度」は、有力な選択肢の一つです。

    法務省は2026年8月21日、同制度に関する最新の統計を公表しました。

    今回は、2026年7月31日現在の統計を基に、実際の利用状況、申請できる土地の条件、必要な費用、司法書士が支援できる範囲を解説します。

    相続土地国庫帰属制度の2026年最新統計を解説する司法書士木村光太朗と相続した土地のイメージ

    相続土地国庫帰属制度とは

    相続土地国庫帰属制度は、相続または相続人に対する遺贈によって取得した土地について、一定の条件を満たした場合に、所有権を国庫へ帰属させる制度です。

    相続放棄とは異なり、預貯金や自宅などの財産を相続しながら、利用予定のない特定の土地について国庫帰属を検討できる点が特徴です。

    ただし、申請すれば必ず国が引き取ってくれる制度ではありません。法令上の要件を満たし、法務局による書面審査や実地調査を経て承認される必要があります。

    最新統計では国庫帰属が3,008件

    法務省の統計によると、2026年7月31日現在の状況は次のとおりです。

    • 申請件数:5,863件
    • 国庫に帰属した件数:3,008件
    • 却下件数:85件
    • 不承認件数:96件
    • 取下げ件数:1,102件

    国庫に帰属した土地の内訳は、宅地1,115件、農用地964件、森林199件、その他730件です。

    一方、取下げ1,102件のうち571件は、自治体や隣接地所有者などから土地を有効利用できる見込みが示されたことによるものです。

    制度の検討過程で、売却、隣接地所有者への譲渡、自治体等による活用といった別の解決方法が見つかる場合もあることが分かります。

    なお、3,008件を申請総数5,863件で割った数字を、そのまま「承認率」と捉えることはできません。申請総数には審査中の案件や取下げられた案件も含まれるためです。

    申請できる人

    原則として、相続または相続人に対する遺贈によって土地を取得した所有者が申請できます。

    土地が共有の場合は、共有者全員で共同申請する必要があります。

    共有者のうち少なくとも一人が相続等によって持分を取得している場合には、他の共有者が売買などで持分を取得していても、一定の条件の下で共同申請できることがあります。

    一方、土地を単独で購入した人が「使わなくなった」という理由だけで申請することはできません。

    国庫帰属が難しい土地

    次のような土地は、申請段階で却下されたり、審査の結果として不承認となったりする可能性があります。

    • 建物がある土地
    • 抵当権などの担保権や使用収益権が設定されている土地
    • 通路、墓地、境内地など、他人による使用が予定されている土地
    • 土壌汚染がある土地
    • 境界が明らかでない土地
    • 所有権の範囲について争いがある土地
    • 地上または地下に、管理や処分を妨げる物がある土地
    • 危険な崖があるなど、通常より多くの管理費用を要する土地

    例えば、古い家屋が残っている場合は、そのままでは申請できません。

    建物を取り壊したとしても、境界や埋設物など、ほかの要件について改めて確認する必要があります。

    申請に必要な費用

    申請時には、土地1筆につき1万4,000円の審査手数料が必要です。

    審査手数料は、申請を取り下げた場合や不承認となった場合でも原則として返還されません。

    さらに、承認を受けた後には、国による10年分の管理費用に相当する負担金を納付します。

    負担金は20万円を基準とする土地もありますが、市街地の宅地、農用地、森林などは、土地の種類や面積に応じて金額が増える場合があります。

    建物の解体、境界の確認、残置物の撤去などが必要な場合は、それらの費用も別途考えなければなりません。

    まず国庫帰属だけに決めないことが重要

    利用予定のない土地であっても、最初から国庫帰属だけに絞る必要はありません。

    申請前に、次の可能性を比較することが大切です。

    1. 一般の不動産市場で売却できないか
    2. 隣接地の所有者に譲渡できないか
    3. 地元の自治体や地域団体が活用できないか
    4. 農地であれば農業委員会等への相談が必要ではないか
    5. 国庫帰属の要件と費用を満たせるか

    法務局への事前相談を利用するときも、登記事項証明書、公図、地積測量図、現地写真、固定資産税の納税通知書などを準備しておくと、相談を進めやすくなります。

    司法書士に相談できること

    司法書士は、相続土地国庫帰属制度の申請書や添付書類の作成を業務として行うことができます。

    また、相続関係や共有関係の確認、相続登記、登記記録と公図の確認などは、制度の利用を検討するうえで重要な準備となります。

    ただし、国庫帰属の申請そのものを、司法書士が通常の代理人として行うことはできません。申請者本人または法定代理人が申請する制度であることには注意が必要です。

    当事務所では、次のような点を整理しながら、制度を利用できる可能性を検討します。

    • 誰が土地を相続しているか
    • 相続登記や共有者の整理が必要か
    • 登記記録と現地の状況に違いがないか
    • 国庫帰属以外の方法と比較すべきか
    • 申請書や添付書類をどのように準備するか

    測量、建物解体、売却、税務など他分野の確認が必要な場合には、必要な相談先を含めて整理します。

    まとめ

    2026年7月末までに、相続土地国庫帰属制度を利用して3,008件の土地が国庫に帰属しています。

    制度が実際に利用されていることは確かですが、土地の状態、境界、権利関係、管理上の負担などによっては利用できません。

    申請手数料や負担金に加え、申請前の整備費用が必要になる場合もあります。

    相続した土地を「使わないからすぐ国へ」と考えるのではなく、登記と現地の状況を確認し、売却や譲渡などの可能性も含めて比較することが大切です。

    茅ヶ崎市、藤沢市、寒川町、平塚市周辺で、相続した土地や相続登記についてお困りの方は、木村光太朗司法書士事務所へご相談ください。

    土地が遠方にある場合も、まずは資料を基に必要な手続きを整理します。


    FAQ

    Q1.建物が残っている土地でも申請できますか?

    建物がある土地は申請できません。建物を取り壊した後も、境界、担保権、埋設物など、ほかの要件を満たす必要があります。

    Q2.自分で購入した土地を国に引き取ってもらえますか?

    購入によって取得した土地だけでは、原則として申請できません。相続または相続人に対する遺贈によって取得した土地が対象です。

    Q3.共有名義の土地でも利用できますか?

    利用できる可能性はありますが、共有者全員による共同申請が必要です。共有者の所在や相続関係を先に整理しなければならない場合があります。

    Q4.申請すれば必ず承認されますか?

    必ず承認されるわけではありません。書面審査や実地調査が行われ、却下、不承認または取下げとなる場合があります。

    Q5.司法書士にすべて任せられますか?

    司法書士は申請書や添付書類の作成、相続登記、権利関係の整理などを行えます。ただし、国庫帰属の申請自体は、原則として所有者本人または法定代理人が行います。

    Q6.最初に何を準備すればよいですか?

    登記事項証明書、公図、地積測量図、現地写真、固定資産税の納税通知書などがあると、土地の状況を整理しやすくなります。

    相続した土地や相続登記についてのご相談は、当事務所の「お問い合わせフォーム」からご連絡ください。

    出典

    公開日・最終更新日:2026年8月31日
    執筆・監修:司法書士 木村光太朗(木村光太朗司法書士事務所)

    個人事業主の経営相談は誰にする?資金調達・法人化・事業承継の相談窓口を司法書士が解説

    2026年8月28日
    • 会社・法人設立

    個人事業主の資金調達・法人化・事業承継の相談窓口を案内する司法書士木村光太朗

    個人事業主の経営相談は誰にする?
    資金調達・法人化・事業承継の相談窓口を司法書士が解説

    茅ヶ崎・湘南エリアの皆様、こんにちは。

    JR茅ヶ崎駅から徒歩3分の木村光太朗司法書士事務所、代表司法書士の木村光太朗です。

    個人事業主や中小企業の経営者の方から、次のようなご相談を受けることがあります。

    「事業を拡大したいが、資金調達について誰に相談すればよいか分からない」

    「個人事業から会社にした方がよいのだろうか」

    「補助金、税金、社会保険について、まとめて相談できる場所はないか」

    「子どもが事業を継がない場合、会社や店舗をどうすればよいか」

    これらは、必ずしも司法書士だけで解決できる問題ではありません。

    一方で、相談する側が、最初から「これは銀行」「これは税理士」「これは司法書士」と正確に判断することも難しいと思います。

    結論からお伝えすると、相談先が分からない段階では、まず現在の状況と困っていることを整理できる窓口へ相談することが大切です。

    当事務所でも、相談内容が司法書士業務に該当するか分からない段階からお話を伺い、当事務所で対応できる手続きと、それ以外の専門家や機関に相談すべき内容を整理しています。

    ■ 1.個人事業主の経営課題は一つの分野だけで解決できない

    個人事業主の経営課題は、それぞれが独立しているわけではありません。

    例えば、事業を拡大して新しい設備を導入する場合、設備資金の調達だけでなく、今後の売上予測、税務処理、従業員の採用、契約関係なども検討する必要があります。

    個人事業から会社へ移行する場合も、会社設立の登記だけでは終わりません。

    法人化する時期、資本金、役員構成、税務、社会保険、事業用口座、融資、許認可など、複数の手続きが関係します。

    また、事業承継では、後継者を誰にするかという問題に加えて、会社の株式、事業用不動産、借入れ、個人保証、相続、遺言などを一緒に考えなければなりません。

    そのため、最初に必要なのは「どの専門家に頼むか」を決めることよりも、現在抱えている課題を全体として整理することです。

    ■ 2.経営課題によって相談先は異なる

    一般的には、相談内容によって次のように専門分野が分かれます。

    資金調達・融資

    金融機関、日本政策金融公庫、信用保証協会、商工会議所などが主な相談先です。

    必要な資金の金額や使途、返済期間、事業実績などによって、利用できる融資や条件は異なります。

    税務・会計

    確定申告、法人化による税負担の変化、消費税、役員報酬、事業承継税制などは、税理士の専門分野です。

    法人化については、登記だけでなく、税務上の影響も確認してから判断する必要があります。

    雇用・社会保険

    従業員の採用、就業規則、社会保険、労働保険、助成金などは、社会保険労務士や関係機関への相談が必要です。

    補助金・事業計画

    補助金は制度ごとに対象者、対象経費、申請時期が異なります。

    商工会議所、よろず支援拠点、認定経営革新等支援機関などが相談先となるほか、制度によっては行政書士や中小企業診断士などが申請を支援しています。

    法人化・会社登記

    株式会社や合同会社の設立、役員変更、本店移転、商号・目的変更、増資、解散などの商業・法人登記は、司法書士の専門分野です。

    事業承継・相続

    事業承継には、司法書士、税理士、弁護士、金融機関、事業承継・引継ぎ支援センターなど、複数の専門家・機関が関わります。

    親族への承継、従業員への承継、第三者への譲渡・M&Aでは、それぞれ必要な準備が異なります。

    ■ 3.司法書士が直接対応できる経営者支援

    司法書士は登記の専門家ですが、単に登記申請書を提出するだけではありません。

    当事務所では、主に次のようなご相談に対応しています。

    ① 個人事業の法人化・会社設立

    個人事業を株式会社や合同会社にする場合には、会社の基本設計を決めたうえで、定款を作成し、設立登記を申請します。

    会社の種類、商号、本店所在地、事業目的、資本金、役員構成、決算期などは、設立後の経営にも影響します。

    税務や社会保険については、それぞれの専門家への確認が必要ですが、当事務所では、登記手続きを中心に全体の流れを整理します。

    ② 会社設立後の変更登記

    会社を設立した後も、役員変更、本店移転、事業目的の追加、増資などがあれば、変更登記が必要になる場合があります。

    登記事項に変更が生じたまま放置すると、過料の対象になる可能性もあるため、事業内容や組織に変化があったときは確認が必要です。

    ③ 事業用不動産の登記

    店舗、事務所、工場、倉庫などの不動産を取得した場合や、個人名義の不動産を会社へ移す場合には、不動産登記が関係します。

    名義を変更する理由によって、売買、現物出資、会社分割など法律関係や税務上の取扱いが異なるため、税理士等との連携が必要になることもあります。

    ④ 事業承継と経営者個人の相続対策

    個人事業や同族会社では、事業と経営者個人の財産が密接に結びついています。

    会社の株式、事業用不動産、金融機関からの借入れなどを整理しないまま相続が発生すると、事業の継続に支障が生じることがあります。

    後継者への株式移転、役員変更、遺言、任意後見、事業用不動産の承継などを早めに検討することが重要です。

    ■ 4.司法書士業務以外のことも相談してよい?

    「融資の相談なので、司法書士事務所に聞くことではないと思った」

    「補助金が使えるか知りたいが、誰に聞けばよいか分からない」

    このような段階でも、当事務所にご相談いただいて構いません。

    すべての業務を当事務所が直接行うわけではありませんが、まずお話を伺い、次のように整理します。

    ・当事務所で対応できる登記・法律手続き
    ・金融機関へ相談すべき内容
    ・税理士、社会保険労務士、弁護士等の確認が必要な内容
    ・商工会議所や公的支援機関を利用した方がよい内容
    ・複数の専門家が連携して進めるべき内容

    相談者ご本人の同意なく、相談内容や個人情報を外部へ伝えることはありません。

    ご希望がある場合に、必要な範囲で金融機関や各分野の専門家、支援機関をご案内します。

    ■ 5.資金調達を考えるときも、借入れだけを先に決めない

    事業資金が必要になった場合、金融機関へ相談する前に、少なくとも次の点を整理しておくことが重要です。

    ・何のために資金が必要なのか
    ・必要な金額はいくらか
    ・いつまでに必要なのか
    ・毎月いくらまで返済できるのか
    ・設備投資によって売上や利益がどう変わるのか
    ・個人事業のまま借りるのか、法人化も検討するのか

    特に法人化を予定している場合は、「個人事業主として融資を受けるのか」「会社設立後に会社として申し込むのか」によって、契約や手続きが変わることがあります。

    そのため、資金調達と法人化を別々に考えるのではなく、金融機関、税理士、司法書士などへ必要な順番で相談することが大切です。

    なお、当事務所では、金融商品の説明、融資審査、申込みの受付は行っていません。融資の可否や具体的な条件は、取扱金融機関等の審査によって決定されます。

    ■ 6.事業承継は「引退するとき」に始めるものではない

    事業承継は、経営者が引退する直前に始めればよいものではありません。

    後継者の育成、株式や事業用資産の移転、取引先や従業員への説明、借入れや個人保証の整理などには時間がかかります。

    後継者が決まっていない場合には、親族や従業員への承継だけでなく、第三者承継やM&A、廃業なども含めて検討する必要があります。

    中小企業庁も、親族内承継、従業員承継、M&Aを含む事業承継の支援策やガイドラインを公表しています。

    まだ具体的な引退時期を決めていなくても、会社の株主構成、事業用不動産、借入れ、後継者候補などを確認しておくことが、将来の選択肢を増やします。

    茅ヶ崎・湘南の個人事業主、中小企業経営者の皆様へ

    「法人化した方がよいのか分からない」

    「資金調達と会社設立をどの順番で進めればよいか分からない」

    「事業承継について、誰に相談すればよいか分からない」

    このような段階でも構いません。

    木村光太朗司法書士事務所では、現在の状況を伺い、司法書士が直接対応できる手続きと、金融機関や他の専門家・支援機関へ相談すべき内容を整理します。

    まずは、お問い合わせフォームからご相談ください。

    ■ 7.当事務所を「最初の相談窓口」としてご利用ください

    経営上の問題は、きれいに専門分野ごとに分かれて発生するものではありません。

    資金調達の相談から法人化が必要だと分かることもあれば、相続の相談から会社の事業承継に問題があると分かることもあります。

    「司法書士に相談する内容なのか分からない」

    「複数の専門家に、どの順番で相談すればよいか分からない」

    「経営と個人の相続問題をまとめて整理したい」

    このような段階でも構いません。

    当事務所で対応できない専門業務まで請け負うことはできませんが、現在の状況と課題を伺い、誰に何を相談すべきかを整理します。

    茅ヶ崎市、藤沢市、寒川町、平塚市など湘南地域で事業を営んでいる方は、事業の規模や業種を問わず、まずはお問い合わせください。

    ■ 8.相談前に準備しておくとよい資料

    経営相談の際には、次のような資料があると、現在の状況と必要な相談先を整理しやすくなります。

    • 現在の事業内容が分かる資料
    • 直近の確定申告書または決算書
    • 金融機関からの借入れの内容
    • 法人の場合は定款と登記事項証明書
    • 店舗、事務所、工場などの不動産関係資料
    • 今後予定している設備投資や事業拡大の内容
    • 法人化、資金調達、事業承継を希望する時期
    • 後継者候補や株主構成が分かる資料

    すべての資料がそろっていなくても、ご相談いただけます。

    まずは何に困っているのか、いつまでに対応したいのかを整理しておくだけでも、その後の相談が進めやすくなります。

    ■ よくある質問

    Q.登記を依頼するか決まっていなくても相談できますか?

    はい。法人化すべきか迷っている場合や、どの手続きが必要か分からない段階でも、現在の状況を伺います。
    具体的な業務と費用については、相談内容を整理した後にご案内します。

    Q.融資について相談できますか?

    必要な資金の目的や法人化との関係などを整理し、必要に応じて金融機関の相談窓口をご案内することは可能です。
    ただし、当事務所が金融商品の説明、融資審査、申込受付を行うものではありません。

    Q.税金や社会保険も相談できますか?

    一般的な手続きの流れを整理することはできますが、具体的な税務判断は税理士、社会保険・労務に関する判断は社会保険労務士の専門分野です。
    必要に応じて各専門家への相談をご案内します。

    Q.個人事業を法人化するタイミングは、どのように決めますか?

    売上や利益だけでなく、今後の事業展開、従業員の雇用、取引先との関係、資金調達、税務、社会保険、事業承継などを総合的に検討します。
    登記だけで判断せず、税理士や金融機関等の意見も確認することをおすすめします。

    Q.後継者が決まっていなくても、事業承継の相談はできますか?

    はい。後継者候補の有無、株式、事業用不動産、借入れなどを確認し、親族内承継、従業員承継、第三者承継など、今後検討すべき課題を整理します。

    ■ まとめ――相談先が分からない段階で、一人で抱え込まない

    個人事業主や中小企業の経営課題には、資金調達、法人化、税務、労務、補助金、事業承継など、複数の分野が関係します。

    経営者ご自身が、最初からすべての専門家を正確に選ぶ必要はありません。

    まずは現在の状況と、解決したい問題を整理することが出発点です。

    私は、司法書士として直接対応できる手続きを明確にしながら、必要に応じて金融機関や各分野の専門家、支援機関へつなぐことも、地域で事業を営む方を支える役割の一つだと考えています。

    登記の相談かどうか分からない段階でも、どうぞお気軽にお問い合わせください。


    木村光太朗司法書士事務所
    司法書士 木村光太朗
    〒253-0056
    神奈川県茅ヶ崎市共恵一丁目4番20-401号
    TEL:0467-84-8945
    受付時間:9:00~17:00(土日祝休み)

    【参考資料】

    法務局「商業・法人登記申請手続」
    中小企業庁「事業承継」
    J-Net21「起業・創業の相談窓口」

    ※本記事は2026年8月28日現在の公表情報に基づいて作成しています。個別の手続きや利用できる支援制度は、事業内容や状況によって異なります。

    執筆:司法書士 木村光太朗

    【2026年法改正】成年後見制度は廃止される?「後見・保佐」の見直しを司法書士が解説

    2026年8月25日
    • 成年後見

    茅ヶ崎・湘南エリアの皆様、こんにちは。

    JR茅ヶ崎駅から徒歩3分の木村光太朗司法書士事務所、代表司法書士の木村光太朗です。

    2026年6月、成年後見制度を大きく見直す改正法が成立しました。

    「成年後見制度が廃止されるらしい」

    「今ついている成年後見人はどうなるのか」

    このような疑問や不安をお持ちの方もいらっしゃると思います。

    結論からお伝えすると、成年後見制度そのものがなくなるわけではありません。

    今回廃止されるのは、成人を対象とする現行の法定後見制度のうち、「後見」と「保佐」という類型です。

    今後は、本人に必要な支援だけを個別に設定する「補助」の制度を中心とした仕組みに再編されます。

    ただし、2026年8月25日現在、この改正はまだ施行されていません。現在は、これまでどおり後見・保佐・補助の3類型が利用されています。


     

    ■ 1.成年後見制度は本当に廃止される?

    「成年後見制度が廃止される」という説明は、正確ではありません。

    認知症、知的障害、精神障害などによって判断能力が不十分な方を、契約や財産管理の面から法的に支える制度は今後も続きます。

    変わるのは、支援の内容を決める方法です。

    現在の法定後見制度は、本人の判断能力の程度に応じて、次の3類型に分かれています。

    ・後見:判断能力を欠いているのが通常の状態
    ・保佐:判断能力が著しく不十分な状態
    ・補助:判断能力が不十分な状態

    改正後は、このうち成人を対象とする「後見」と「保佐」が廃止され、判断能力が不十分な方を広く「補助」の対象とします。

    ただし、現在の補助制度に名前だけを統一するわけではありません。本人の状態と実際に必要な支援に応じて、家庭裁判所が権限を個別に定める新しい制度へ再編されます。

    成年後見制度の現在の基本的な仕組みについては、以前の記事「成年後見人シリーズ~入門編」でも解説しています。
     

    ■ 2.2026年の法改正で何が変わる?

    今回の改正で特に重要なのは、次の4点です。

    ① 必要な行為に限って権限を付与する

    現行の成年後見人には、本人の財産に関する広い代理権や取消権が認められています。

    本人を保護するうえで必要な仕組みである一方、実際に支援が必要な範囲を超えて、本人の自己決定を制限してしまうのではないかという指摘もありました。

    改正後は、例えば次のような行為のうち、本人に必要なものを家庭裁判所が個別に定めます。

    ・預貯金の払戻し
    ・不動産の売却
    ・施設入所や福祉サービスの契約
    ・借入れや保証
    ・遺産分割や相続放棄
    ・本人に代わって行う特定の法律行為

    「判断能力の程度だけで一律に広い権限を与える」のではなく、「本人が何に困っているのか」を出発点として支援内容を決める方向へ変わります。

    ② 判断能力を欠く方には「特定補助人」を選任できる

    判断能力を欠くことが通常の状態にある方については、「特定補助人」を付ける制度が新設されます。

    特定補助人には、法律で定められた重要な財産上の行為についての取消権、本人に対する意思表示を受け取る権限、財産の保存行為を行う権限などが認められます。

    そのほかに必要な代理権がある場合は、家庭裁判所が特定の法律行為について代理権を付与します。

    つまり、重い認知症などによって判断能力を欠く方への保護がなくなるわけではありません。

    従来の成年後見人が持っていた包括的な権限をそのまま与えるのではなく、本人の保護に必要な権限を組み合わせる仕組みになります。

    ③ 支援が必要なくなれば終了できる

    現行制度には、一度利用を始めると、本人の判断能力が回復しない限り原則として終了できないという課題があります。

    例えば、不動産の売却や遺産分割のために制度を利用した場合でも、その手続きが終わったという理由だけでは後見制度を終了できません。

    改正後は、付与された同意権、取消権、代理権などについて、必要がなくなったと家庭裁判所が認めた場合、全部または一部を取り消せるようになります。

    すべての権限が不要になった場合には、補助開始の審判自体を取り消す仕組みも設けられます。

    ただし、手続きが終われば自動的に終了するわけではありません。終了や権限の変更には、家庭裁判所の判断が必要です。

    ④ 本人の意向の把握と尊重が明文化される

    改正法では、補助人が本人に情報を提供し、本人の話を聴くなどの適切な方法によって、その意向を把握することが明記されました。

    補助人は、把握した本人の意向を尊重し、心身の状態や生活状況にも配慮しなければなりません。

    また、本人の利益のために特に必要がある場合には、不正行為や著しい任務違反がなくても、家庭裁判所が補助人を解任できる規定が設けられます。

    これは、本人と支援者との関係や支援の質を、より重視する方向への見直しといえます。

    もっとも、本人や家族が希望すれば必ず補助人を交代できるという意味ではありません。

    最終的には家庭裁判所が、本人の利益を基準として判断します。
     

    ■ 3.現在、成年後見人や保佐人がついている場合はどうなる?

    すでに後見開始または保佐開始の審判を受けている方の制度が、改正法の施行と同時に自動終了することはありません。

    既存の成年被後見人、成年後見人、被保佐人、保佐人については、改正法の附則により、原則としてこれまでの制度が引き続き適用されます。

    したがって、施行日に一斉に「補助」へ切り替わるわけでも、現在の後見人等の権限が突然なくなるわけでもありません。

    一方、改正法の施行後は、既存の後見・保佐から新しい補助制度へ移行するための申立てや、従来の後見・保佐を取り消すための手続きも可能になります。

    実際に移行した方がよいかは、本人の判断能力、現在行っている財産管理、必要な代理権、本人と後見人等との関係などを確認して、個別に判断する必要があります。
     

    ■ 4.改正法はいつから施行される?

    成年後見制度に関する改正は、2026年6月24日の公布日から2年6か月以内に、政令で定める日から施行されます。

    遅くとも2028年12月頃までには施行される予定ですが、2026年8月25日現在、具体的な施行日はまだ決まっていません。

    申立書の様式、家庭裁判所における具体的な審理方法、権限の設定や見直しに関する実務運用などについては、今後公表される政令、省令、裁判所の案内等を確認する必要があります。

    施行日などの新しい情報が公表された場合は、当事務所のブログでも改めて解説します。
     

    ■ 5.制度の改正を待ってから申立てをした方がよい?

    現在すでに次のような問題が生じている場合は、改正法の施行を待つべきとは限りません。

    ・親の預貯金を動かせず、施設費や医療費を支払えない
    ・判断能力が低下した本人名義の不動産を売却する必要がある
    ・遺産分割協議に参加できない相続人がいる
    ・訪問販売や詐欺的な契約を繰り返している
    ・本人名義の契約や財産管理が止まっている

    現在の法定後見制度にも、本人の財産や生活を守るための重要な役割があります。

    制度が将来変わるという理由だけで必要な申立てを先延ばしにすると、支払い、契約、相続、不動産売却などの手続きが進まなくなる可能性があります。

    まずは「誰が、何の手続きで困っているのか」を整理し、現在の制度を利用する必要があるかを検討することが大切です。
     

    ■ 6.本人や家族が今から準備できること

    今回の改正では、本人に必要な支援を具体的に示すことが、これまで以上に重要になります。

    ご家族で、次の内容を整理しておくことをおすすめします。

    ・本人が自分でできること
    ・家族の手助けがあればできること
    ・法律上の代理権がなければ進められないこと
    ・管理が必要な預貯金、不動産、保険、事業など
    ・施設入所や今後の生活についての本人の希望
    ・支援を任せたい人と、任せたくない人
    ・親族、福祉関係者、医療関係者による支援体制

    本人に十分な判断能力がある段階であれば、任意後見契約、財産管理契約、遺言、死後事務委任などを組み合わせて将来に備える方法もあります。

    任意後見については「茅ヶ崎の個人事業主が『元気なうち』に結ぶ、任意後見契約の作り方」も参考にしてください。
     

    ■ よくある質問

    Q.成年後見制度は完全になくなるのですか?

    いいえ。判断能力が不十分な方を法的に支援する制度は残ります。成人を対象とする現行の「後見」「保佐」が廃止され、新しい補助制度を中心とする仕組みに再編されます。

    Q.現在の成年後見人は自動的に解任されますか?

    いいえ。現在利用中の後見・保佐は、原則として施行後も従来の制度が適用されます。自動的な終了や一斉の切替えはありません。

    Q.2026年8月現在、新しい補助制度を利用できますか?

    まだ利用できません。具体的な施行日は今後、政令で定められます。それまでは現行の後見・保佐・補助の制度が適用されます。

    Q.制度が変わるまで申立てを待つべきですか?

    現在すでに財産管理や契約上の問題が発生している場合、待つことで本人に不利益が生じる可能性があります。

    現在の制度を利用すべきか、個別に検討することをおすすめします。
     

    ■ まとめ――制度の名前より「本人に何が必要か」

    今回の法改正は、単に「後見・保佐」という名称をなくすだけの改正ではありません。

    本人にどのような支援が必要なのかを具体的に考え、必要な範囲に限って法的な権限を設定する方向への大きな転換です。

    私は成年後見実務に継続的に携わる司法書士として、今回の改正で最も重要なのは、制度を利用する本人の意向と生活を中心に支援を組み立てることだと考えています。

    一方で、必要な代理権を申立ての段階でどこまで予測できるのか、緊急時に迅速な対応ができるのかなど、今後の実務運用を注視すべき課題もあります。

    「現在の後見制度を利用した方がよいのか分からない」

    「親に成年後見人がついているが、改正後どうなるのか知りたい」

    「任意後見と法定後見のどちらを検討すべきか迷っている」

    このような段階でも構いません。ご本人とご家族の状況を整理したうえで、必要な手続きを一緒に検討いたします。

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    木村光太朗司法書士事務所
    司法書士 木村光太朗

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    TEL:0467-84-8945
    受付時間:9:00~17:00(土日祝休み)

    【参考資料】

    法務省「民法等の一部を改正する法律(成年後見及び遺言の制度の見直し)」
    参議院「民法等の一部を改正する法律案・議案要旨」
    衆議院「民法等の一部を改正する法律案・法律本文」

    ※本記事は2026年8月25日現在の法令及び公表資料に基づいています。
    今後の政令、省令、裁判所の運用等により、手続きの詳細が変更される可能性があります。

    執筆:司法書士 木村光太朗

    【遺言シリーズ第5回】デジタル遺言はいつから使える?2026年の民法改正を司法書士が解説

    2026年8月17日
    • 生前相続のご準備

    茅ヶ崎・湘南エリアの皆様、こんにちは。

    JR茅ヶ崎駅から徒歩3分の木村光太朗司法書士事務所、代表司法書士の木村光太朗です。

    遺言シリーズの第5回目となる今回は、2026年の民法改正によって新設されることになった「デジタル遺言」について解説します。

    結論からお伝えすると、デジタル遺言の制度は法律として成立していますが、2026年8月現在、まだ利用することはできません。

    パソコンやスマートフォンで遺言書を作成し、そのデータを保存しておくだけでは、現時点では法律上有効な遺言書にはならないため注意が必要です。

     

    ■ 1. デジタル遺言の正式名称は「保管証書遺言」

    2026年6月17日、「民法等の一部を改正する法律」が成立し、同月24日に公布されました。

    この改正によって新設されるのが、一般に「デジタル遺言」と呼ばれている「保管証書遺言」です。

    保管証書遺言では、パソコンなどで作成した電子データによる遺言書も利用できるようになります。

    これまでの自筆証書遺言のように、原則として全文を手書きする必要がなくなる点が大きな特徴です。

    ただし、単にパソコンで遺言書を作成して保存すればよいわけではありません。

    遺言者本人が法務局の遺言書保管官に対し、作成した遺言の全文を口頭で述べたうえで、法務局に遺言書を保管してもらうことが効力発生の条件となります。

    本人確認や意思確認を受けず、自宅のパソコンやクラウド上に保存されているだけのデータは、保管証書遺言には該当しません。

     

    ■ 2. デジタル遺言はいつから利用できる?

    デジタル遺言の具体的な開始日は、まだ決まっていません。

    法律上は、公布日の2026年6月24日から3年以内に、政令で定める日から施行されることになっています。

    したがって、遅くとも2029年6月頃までには制度が始まる予定ですが、2026年8月現在、法務局へデジタル遺言の保管を申し込むことはできません。

    今すぐ有効な遺言書を作成する場合は、これまでどおり、主に次の方法から選ぶことになります。

    ・本人が手書きで作成する「自筆証書遺言」

    ・公証人が関与して作成する「公正証書遺言」

    「近いうちにデジタル遺言が始まるなら、それまで待とう」と考える方もいらっしゃるかもしれません。

    しかし、病気や認知症によって遺言能力が失われてしまうと、新しい制度が始まっても遺言書を作成できません。

    遺言書は、制度の開始を待つことよりも、判断能力がしっかりしているうちに作成することの方が重要です。

    遺言書を作成する時期については、前回の「『認知症』になってからでは遅い?遺言書を書くべき正しいタイミング」でも解説しています。

     

    ■ 3. 現在の自筆証書遺言との違い

    現在の自筆証書遺言は、財産目録を除き、遺言者本人が本文、日付及び氏名を手書きし、押印して作成する必要があります。

    今回の法改正では、自筆証書遺言の押印義務も廃止されることになりました。

    ただし、押印義務の廃止にも別途施行日が定められるため、2026年8月現在は、これまでどおり押印が必要です。

    法務局には、現在も「自筆証書遺言書保管制度」があります。

    手数料3,900円で自筆証書遺言を保管してもらうことができ、紛失や改ざんを防げるほか、死亡後の家庭裁判所における検認も不要になります。

    もっとも、法務局が確認するのは主に遺言書の形式です。財産の分け方に法的な問題がないか、遺留分への配慮が十分か、遺言内容を実現できるかまで保証してもらえる制度ではありません。

    現在の自筆証書遺言書保管制度と、今後始まるデジタル遺言は、別の制度として理解する必要があります。

     

    ■ 4. デジタル遺言が始まれば、公正証書遺言は不要になる?

    デジタル遺言が始まっても、公正証書遺言の重要性は変わらないと考えています。

    公正証書遺言は、公証人が遺言者の意思を確認し、法律的に整理した文案を作成します。

    証人2名が立ち会い、遺言の原本も公証人側で保管されるため、形式上の不備や紛失、改ざんのリスクが非常に低い方法です。

    特に、次のような場合は、今後も公正証書遺言をお勧めします。

    ・子供のいないご夫婦

    ・再婚しており、前の配偶者との間に子供がいる方

    ・相続人ごとに財産の取得割合を変えたい方

    ・相続人ではない人や法人へ財産を遺贈したい方

    ・疎遠な相続人がいる方

    ・不動産を特定の人に確実に承継させたい方

    ・遺言能力をめぐる争いが心配な方

    ・司法書士などの専門家を遺言執行者に指定したい方

    デジタル遺言は、手書きの負担を減らし、遺言書を作りやすくする制度です。

    一方、公正証書遺言は、遺言内容の確実性や、相続開始後の手続の円滑さを重視した制度です。

    目的や家族関係、財産の内容に応じて選ぶことが大切です。

     

    ■ 5. デジタル遺言についてよくある質問

    Q.現在、Wordで作成した遺言書に氏名を入力すれば有効ですか?

    いいえ。2026年8月現在、パソコンで作成した遺言書を印刷しただけでは、自筆証書遺言として有効になりません。

    デジタル遺言の制度もまだ開始されていません。

     

    Q.スマートフォンに遺言を録音・録画しておけば有効ですか?

    通常の状況では、録音や動画だけで有効な遺言書を作成することはできません。

    ご家族へのメッセージとして残すことはできますが、財産の承継について法的効力を持たせるには、法律で定められた方式による遺言書が必要です。

     

    Q.デジタル遺言が始まるまで待った方がよいですか?

    お勧めしません。遺言書は、ご本人に十分な判断能力があるうちに作成しなければなりません。

    必要であれば、現在の制度で遺言書を作成し、将来、家族関係や財産状況が変わったときに見直すことができます。

     

    ■ 6. 茅ヶ崎・湘南での遺言書作成は当事務所へ

    デジタル遺言によって遺言書の作成方法は変わりますが、「誰に、どの財産を、どのように残すか」を慎重に考える必要があることは変わりません。

    相続登記や成年後見の実務に携わっていると、遺言書が1通あれば防げたはずのトラブルを数多く目にします。

    当事務所では、公正証書遺言や自筆証書遺言の文案作成、公証人との事前調整、必要書類のご案内、遺言執行者の指定まで、ご希望に応じて一貫してサポートしております。

    「自分の場合は、どの遺言書が適しているのか分からない」という段階でも問題ありません。まずはお気軽にご相談ください。

     

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    木村光太朗司法書士事務所

    住所:神奈川県茅ヶ崎市共恵一丁目4番20-401号(JR茅ヶ崎駅徒歩3分)

    電話:0467-84-8945(受付9:00~17:00、事前予約で時間外対応可)

    HP:https://kimura-kotaro-office.jp/

    執筆:司法書士 木村光太朗

    【参考資料】

    法務省「民法等の一部を改正する法律」

    法務省「自筆証書遺言書保管制度について」

    日本公証人連合会「公正証書遺言と自筆証書遺言の違い」