家族がいない人が亡くなったら?「相続人不存在」と特別縁故者制度について

2025.05.29

「独身で子どもも兄弟もいないのですが、万が一のとき、自分の財産はどうなるのでしょうか?」

近年、こうしたご相談が増えてきました。

高齢化や生涯未婚率の上昇などにより、「家族がいない」「相続人が誰もいない」ケースが珍しくなくなってきています。

今回は、相続人がいない場合の相続の流れと、関係が深い方が財産を受け取れる特別縁故者制度について解説します。


相続人がいない場合の基本的な仕組み

相続が発生すると、まずは民法に基づいて、配偶者・子・親・兄弟などの相続人を探します。

しかし、次のようなケースでは、法定相続人が一人もいない状態が発生します。

  • 生涯独身で子どももいない
  • 両親や兄弟姉妹もすでに亡くなっている
  • 養子縁組もしていない
  • 相続人がすべて相続放棄した

このような場合、「相続人不存在」という状態となり、特別な手続きが必要となります。


相続人不存在となった場合の流れ

  1. 家庭裁判所に「相続財産清算人」を選任してもらう
     → 利害関係人や債権者、行政機関などが申立て可能です。
  2. 清算人が財産を調査・整理し、公告で相続人の有無を確認する
  3. 一定期間(通常6か月以上)経っても相続人が見つからなければ「相続人不存在」が確定
  4. 財産は原則として国庫に帰属

ただし、それで終わりではありません。

ここで登場するのが「特別縁故者制度」です。


特別縁故者制度とは?

相続人がいないにもかかわらず、亡くなった方に対して特別に親しい関係にあった人がいた場合、

財産の一部または全部を受け取れる可能性があります。

【具体例】

  • 生前に長年同居していた内縁の配偶者
  • 看病・介護をしていた親しい友人や知人
  • 営業停止後も家賃を払ってくれた店舗オーナー
  • 法的関係はないが事実上の家族だった人

このような方は、「特別縁故者」として家庭裁判所に申し立てることで、遺産の分与を受けられる可能性があります。


注意点と手続き

  • 相続人がいないことが前提(=遺言がない or 無効)
  • 相続財産清算人が財産を調査・整理後、裁判所に対して分与の申立てを行う必要あり
  • 申立て期限は、相続人捜索の公告期間満了から3か月以内
  • 財産の全額が認められるわけではなく、「関係の深さ」「貢献の度合い」が考慮される

まとめ:家族がいなくても「遺す相手」を決める手段はある

✅ 相続人がいないと、原則として財産は国庫へ
✅ 特別縁故者がいた場合、財産を分与できる可能性あり
✅ ただし、手続きは煩雑で、裁判所の判断が必要

このような事態を避けたい場合、遺言書を作成しておくことが最も確実な手段です。

あらかじめ「この人に遺したい」と明記しておくことで、法的に有効な財産承継が可能となります。


【司法書士からのひとこと】

弊所では、遺言書の作成支援や、相続人がいないケースの財産承継対策にも対応しております。

「家族がいない」「万が一に備えたい」という方は、ぜひ弊所にご相談ください。