遺言書が見つかった場合の確認手続きと注意点
相続手続きを進める中で、遺品の整理をしていたら遺言書らしきものが出てきた、というケースは少なくありません。
しかし、遺言書が見つかったからといって、すぐに内容に従って手続きを進めてよいわけではありません。
むしろ、正しい確認手続きや対応を怠ると、遺言が無効になったり、法的トラブルに発展する恐れもあります。
今回は、遺言書が見つかったときに行うべき手続きと注意すべきポイントについて、司法書士の視点から解説します。
1. 自筆証書遺言が見つかった場合は「検認」が必要
見つかった遺言書が、本人の手書きによる**「自筆証書遺言」**であった場合、家庭裁判所での「検認」手続きが必要になります。
✅ 検認とは?
検認とは、遺言書の存在と内容を家庭裁判所が形式的に確認し、偽造や変造を防ぐための手続きです。
この検認を経ないまま遺言書の内容に従って手続きを進めると、相続登記や預金の解約などが認められない場合があります。
✅ 勝手に開封してはいけない
自筆証書遺言が封筒に入っていた場合、**家庭裁判所の立ち会いなしに開封してしまうと、5万円以下の過料(罰金のようなもの)**
が科される可能性があります。
封を切らずにそのまま保管し、速やかに家庭裁判所へ提出する必要があります。
2. 公正証書遺言の場合は検認不要
一方で、**公証役場で作成された「公正証書遺言」**が見つかった場合は、家庭裁判所での検認は不要です。
公正証書遺言は、
- 公証人が作成
- 原本が公証役場に保管されている
ため、法的な信頼性が高く、そのまま相続手続きに使用できます。
ただし、遺言書の内容によっては、相続人間での理解・調整が必要なケースもあるため、注意が必要です。
3. 複数の遺言書が見つかった場合の対応
遺言書が1通とは限らず、複数の遺言書が見つかることもあります。
そのような場合、「日付が最も新しいもの」が有効とされます。
ただし、
- 内容に矛盾がある場合
- 一部だけ有効な記載がある場合
など、実務上の判断が難しいケースもあるため、専門家に確認してもらうことをおすすめします。
4. 遺言書の有効性を確認する必要がある
遺言書が見つかっても、形式に不備がある場合は無効とされてしまうことがあります。
✅ 無効になりうる例
- 日付が書かれていない
- 署名がない、または筆跡が本人のものでない
- ワープロで作成されており、自筆でない(財産目録はこの限りではありません)
- 加筆・訂正があるが、訂正の方式が不適切
このような場合、相続人間で遺産分割協議を行う必要がある可能性もあるため、早めに確認することが重要です。
5. 専門家への相談でトラブルを防ぐ
遺言書の発見は、相続手続きに大きな影響を与える出来事です。
**「どのような種類の遺言か」「有効かどうか」「検認が必要か」**など、正確な判断を下すには法律の知識が欠かせません。
トラブルを避け、スムーズに相続手続きを進めるためにも、遺言書を見つけた際はまず専門家に相談することをおすすめします。
まとめ:遺言書が見つかったときは冷静に、正しく対応を
✅ 自筆証書遺言は勝手に開けず、家庭裁判所で検認を受ける
✅ 公正証書遺言は検認不要で、すぐに手続きに使用できる
✅ 複数の遺言がある場合は「最新の日付」のものが原則有効
✅ 内容や形式に不備がある場合は無効になることもあるため要注意
✅ トラブルを避けるためにも、早めに専門家のアドバイスを受けることが大切
弊所では、遺言書の確認や検認手続きのサポート、相続手続まで一貫して対応しております。
遺言書を見つけた際は、まずは弊所にご相談ください。