相続手続き、どこまでやれば終わり?“見落としがちな遺産”と現実的な限界
「不動産の登記は終わったし、銀行口座も解約できた。これで相続は完了…」
実はその裏に、**“見落とされたまま失われていく遺産”**が存在する可能性があります。
今回は、相続の現場でしばしば問題となる「気づかれていない財産」と、実務で直面する現実的な限界について解説します。
✅ 見落とされやすい「隠れた遺産」とは?
紙の通帳や通知が届く時代から、完全オンライン型の資産が増えた今、家族が気づかない遺産は以下のようなものです。
✅ ネット銀行口座(楽天銀行・PayPay銀行など)
✅ ネット証券(SBI証券・楽天証券など)
✅ 電子マネー・プリペイド(PayPay・Suica・WAONなど)
✅ マイルやポイント(ANAマイル・Tポイントなど)
✅ NFTや仮想通貨(暗号資産取引所)
✅ スマートフォンアプリ内のチャージ残高や有料サービス
被相続人がこれらを家族に伝えていないまま亡くなった場合、その存在すら気づかれず、結果的に失われてしまうリスクが高いのです。
✅ 実務上の大きな壁:「ログインできない」こと
例えば相続人が「父のスマホにPayPayが入っていた気がする」と思っても…
● パスコード・指紋認証が解除できない
● ログインID・パスワードが分からない
● 再発行手続きが本人限定となっている
● 本人以外がアクセスすること自体が利用規約違反
このように、相続人が知っていてもアクセスできないという壁にぶつかることは少なくありません。
また、仮想通貨などは秘密鍵を紛失すれば完全に取り出す手段がなくなってしまう性質を持っています。
✅ 調査できる範囲にも限界がある
司法書士としても、相続人からの依頼があれば調査の支援は可能ですが、以下のような限界があります。
✅ 金融機関や証券会社へ照会できるのは、特定の相続関係資料が揃ってから
✅ ネットサービスや電子マネーは、法人によっては相続受付自体がないケースもある
✅ 被相続人の郵便物やスマホ・PCを見ても、利用証拠がなければ資産の存在確認が難しい
このため、デジタル財産に関しては「生前の備え」が不可欠となっています。
✅ では、どう備えるべきか?
以下のような方法を組み合わせることで、相続時の混乱や損失を防ぐことができます。
✅ ログインIDやパスワードを記録した「デジタル資産リスト」を作成
✅ エンディングノートや遺言書と一緒に保管(可能なら信頼できる人と共有)
✅ パスワード管理アプリを活用し、マスターパスワードのみ伝える
✅ 財産目録を司法書士など専門家に相談しながら整理しておく
特に、独身・おひとりさま・子どもがいない方などは、死後の情報共有が困難になるケースが多いため、早めの対応が重要です。
✅ まとめ:デジタル時代の相続は「見える資産」と「見えない資産」の両方を意識して
✅ 相続手続きは「不動産」と「銀行口座」だけでは終わらない
✅ 見落とされた資産は、放置や失効のリスクが高い
✅ ログイン情報や秘密鍵がなければ、手続き自体が不可能になることもある
✅ 生前の情報整理と、信頼できる人・専門家との共有が鍵になる
弊所では、遺産承継業務のご相談に加え、デジタル資産を含めた財産整理のサポートも承っております。
「家族に迷惑をかけたくない」「どこまで備えておけば安心なのか分からない」とお感じの方は、ぜひ弊所にご相談ください。