後見人が選ばれている場合の相続手続きの進め方とは?
成年後見制度を利用している方が亡くなった場合、後見制度は終了します。
しかし、そこから始まるのが「相続手続き」です。
ここでよくあるのが、
「後見人がそのまま相続手続きを進められるの?」
「相続人に後見人がついている場合、どうすればよいの?」
といった疑問です。
今回は、成年後見制度と相続手続きが交わる場面での実務上のポイントについて解説します。
✅ 本人が亡くなると、成年後見制度は終了する
成年後見制度は、本人が存命で判断能力が不十分な間に限って効力を持つ制度です。
そのため、本人が亡くなった場合、後見制度は自動的に終了します。
ただし、後見人には以下のような業務が残ります。
● 家庭裁判所への終了報告(収支・残高などの報告書の提出)
● 財産の引き継ぎ(通帳、不動産関係資料など)
● 必要に応じた支払い(葬儀費用、公共料金など)
※注意点として、後見人は相続手続きを代理することはできません。
✅ 後見人は相続人ではない限り、相続手続きを代理できない
後見人ができるのは、「本人の生前の代理」までです。
本人が亡くなった後、財産は相続人に承継されるため、後見人はその後の処分や登記の申請などを行うことはできません。
✅ 相続登記や預貯金の解約などは、相続人自身またはその代理人(委任を受けた者)が行う必要があります。
✅ 後見人が相続人であったとしても、遺産分割協議などは相続人の立場として行う必要があり、後見人としての権限とは切り離して考える必要があります。
✅ 相続人の中に後見人がついている人がいる場合の対応
相続人の中に成年被後見人(判断能力がない人)が含まれている場合には、次のような制限があります。
● 後見人が他の相続人と遺産分割協議をする場合、利益相反にあたる
● この場合は、家庭裁判所に「特別代理人」の選任申立てが必要
● 特別代理人が選任されて初めて、遺産分割協議が成立できる
この手続きを怠ると、後々協議が無効となるおそれがあり、相続登記や預金解約がスムーズに進まなくなる原因になります。
✅ 専門職後見人が関与している場合のメリット
後見人が司法書士などの専門職であった場合、相続人にとって次のようなメリットがあります。
✅ 財産の収支が明確に記録されており、相続財産の内容が把握しやすい
✅ 残高証明書や不動産関係書類などが整っているため、相続手続きが円滑
✅ 家庭裁判所との連携もスムーズで、必要書類の取り扱いも正確
そのため、相続発生後の手続きにスムーズに移行できるケースが多く、家族の負担軽減にもつながります。
✅ まとめ:後見と相続、それぞれの役割を理解してスムーズな手続きを
✅ 成年後見制度は本人の死亡により終了し、相続手続きは相続人の責任で進める
✅ 後見人が相続人でない限り、相続手続きの代理はできない
✅ 相続人に後見人がついている場合は、家庭裁判所で特別代理人の選任が必要
✅ 専門職後見人がついていた場合、相続手続きがスムーズに進みやすい
✅ 相続登記や分割協議には法的なルールがあるため、早めに専門家へ相談を
弊所では、成年後見制度と相続の両方に関する豊富な実務経験をもとに、ご家族を丁寧にサポートしております。
相続人に後見人がついている、または後見制度を利用していた方が亡くなったなど、お困りの際はぜひ弊所にご相談ください。