相続人申告登記とは?遺産分割がまとまらないときの2027年期限対策を司法書士が解説

2026.10.05

「父名義の実家について、兄弟の話し合いがまとまらない」
「連絡が取れない相続人がいるため、相続登記を進められない」
「2027年3月31日の期限が近いが、誰が不動産を取得するか決まっていない」

過去に発生した相続についても、相続登記の義務化は適用されます。

2024年4月1日より前から不動産を相続したことを知っていた場合、相続登記の期限は原則として2027年3月31日です。

しかし、相続人全員の話し合いが終わらなければ、遺産分割の内容に基づく相続登記はできません。

このようなときに、期限内の義務履行のために利用できるのが「相続人申告登記」です。

相続人申告登記は、通常の相続登記より簡易な手続ですが、不動産の名義を相続人へ変更する制度ではありません。

できることと、できないことを理解して選ぶ必要があります。

今回は、2026年9月28日現在の法務省の公表情報を基に、期限の考え方、相続人申告登記の効果、必要書類、手続後の注意点を解説します。

 

過去の相続にも相続登記の義務がある

相続登記の申請義務化は、2024年4月1日に始まりました。

原則として、不動産を相続によって取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請しなければなりません。

義務化が始まる前に発生した相続も対象です。2024年4月1日より前から、不動産を相続したことを知っていた場合の期限は、原則として2027年3月31日です。

一方、2024年4月1日以後になって初めて、自分が不動産を相続したことを知った場合は、その知った日から3年以内が期限となります。

したがって、全ての過去の相続について一律に2027年3月31日が期限になるわけではありません。

相続の発生時期だけでなく、不動産を相続したことを知った時期も確認する必要があります。

正当な理由なく義務に違反した場合は、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。

ただし、期限を過ぎた瞬間に自動的に過料が科されるという仕組みではありません。

法務省は、登記官が義務違反を把握した場合、原則として、まず登記申請をするよう催告し、それでも正当な理由なく申請しないときに裁判所へ過料事件の通知をする運用を示しています。

過料の有無だけでなく、相続人が増えて手続が複雑になる、売却や担保設定ができないといった不利益を避けるためにも、早めの整理が大切です。

相続人申告登記とは

相続人申告登記は、相続登記の期限内に遺産分割がまとまらない場合などに、簡易な方法で基本的な申請義務を履行できる制度です。

申出をする人は、対象となる不動産を特定したうえで、法務局に次の事実を申し出ます。

  • 登記簿上の所有者について相続が開始したこと
  • 自分がその所有者の相続人であること

登記官が審査した後、申出をした相続人の氏名や住所などが登記簿に付記されます。

共同相続人の一人が、自分の分だけ単独で申し出ることができます。他の相続人の分もまとめて代理で申し出ることはできますが、その場合は各相続人からの委任が必要です。

重要なのは、一人が自分について申出をしただけで、他の相続人全員の義務まで履行されたことにはならないという点です。

各相続人が自分で申し出るか、代表者へ委任してまとめて申し出る必要があります。

相続人申告登記でできること

相続人申告登記を期限内に行うと、その申出をした相続人については、相続登記に関する基本的な申請義務を履行したものとみなされます。

通常の相続登記では、被相続人の出生から死亡までの戸籍などを集め、法定相続人全員を確認する場面が多くあります。

相続人申告登記では、原則として、申出をする本人が被相続人の相続人であることを確認できる範囲の戸籍で手続を進められます。

また、申出に登録免許税はかかりません。ただし、戸籍謄本等の取得費用や、司法書士へ依頼する場合の報酬などは別途必要です。

期限が迫る一方で、遺産分割協議の成立まで時間を要する場合には、現実的な選択肢となります。

相続人申告登記ではできないこと

相続人申告登記は「通常の相続登記の代わり」ではありません。

申出をしても、次のことは解決しません。

  • 不動産の所有権が申出人へ移転したことを公示する
  • 各相続人の持分を登記する
  • 遺産分割協議を成立させる
  • 不動産を売却する
  • 不動産へ抵当権を設定する

相続人申告登記をしただけでは、売却に必要な所有権移転の前提が整いません。

不動産を売る場合や融資の担保に入れる場合などは、最終的に通常の相続登記が必要です。

「申告登記をしたから相続手続は全て終了した」と誤解しないことが重要です。

遺産分割が成立した後は、改めて登記が必要

相続人申告登記をした後に遺産分割が成立し、その結果として不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に、その内容に基づく相続登記を申請しなければなりません。

この追加的な義務は、先に行った相続人申告登記だけでは履行できません。

つまり、相続人申告登記は、話し合いが終わるまでの間に基本的な義務を果たすための制度です。

その後、遺産分割がまとまった段階で、正式な名義変更を行う必要があります。

相続人申告登記が向いているケース

次のような場合には、相続人申告登記を検討する余地があります。

  • 相続登記の期限が近いが、遺産分割協議が終わっていない
  • 連絡が取れない相続人がいる
  • 相続人が多く、戸籍の収集や協議に時間がかかる
  • 遺言の有効性や遺産の範囲について確認が必要である
  • 誰が不動産を取得するか決まるまで時間を要する

一方、相続人と遺産分割の内容がすでに確定している場合は、相続人申告登記を経由せず、通常の相続登記を行う方が一度で手続を終えられることがあります。

期限まで時間がある場合も、最初から相続人申告登記に決めるのではなく、通常の相続登記が可能かを先に確認することが大切です。

一般的に準備する書類

具体的な書類は相続関係や申出方法によって異なりますが、一般的には次の資料を確認します。

  • 相続人申告登記の申出書
  • 登記簿上の所有者が亡くなったことを確認できる戸籍等
  • 申出人がその相続人であることを確認できる戸籍等
  • 申出人の住所を確認する書類
  • 代理人へ依頼する場合の委任状
  • 対象不動産の登記事項を確認できる資料

申出書に住民票上の氏名のふりがなと生年月日を記載した場合、住基ネットによる確認が可能となり、住所を確認する書類を省略できる場合があります。

数代にわたって相続登記がされていない場合は、中間の相続関係を確認する戸籍が追加で必要になるなど、書類が複雑になります。

期限までに確認したい5つのこと

  1. 亡くなった方名義の不動産がどこにあるか
  2. 登記簿上の所有者が誰になっているか
  3. 遺言書があるか
  4. 誰が相続人となるか
  5. 通常の相続登記と相続人申告登記のどちらを選ぶか

不動産の場所が分からない場合は、2026年2月に始まった所有不動産記録証明制度も調査手段になります。

ただし、検索条件によっては不動産が抽出されないことがあります。詳しくは「親名義の不動産をどう探す?所有不動産記録証明制度」をご参照ください。

なお、100万円以下の土地などについて設けられている相続登記の登録免許税の免税措置も、現行の公表内容では2027年3月31日までです。

適用条件があるため、全ての相続登記が免税になるわけではありません。

司法書士に相談できること

司法書士は、相続登記や相続人申告登記の申出について、書類作成、戸籍の確認、法務局への手続などを支援できます。

当事務所では、次の点を整理します。

  • 相続登記の期限がいつになるか
  • 申告登記を利用すべきか、通常の相続登記を進められるか
  • 誰が申出を行い、誰の委任が必要か
  • 対象となる不動産に漏れがないか
  • 数次相続や代襲相続が発生していないか
  • 遺産分割後に必要となる正式な相続登記

相続人間に法的な争いがあり、交渉や遺産分割調停等が必要な場合は、司法書士が扱える業務の範囲を確認したうえで、必要に応じて弁護士等の適切な相談先をご案内します。

まとめ

2024年4月1日より前から不動産を相続したことを知っていた場合、相続登記の期限は原則として2027年3月31日です。

遺産分割がまとまらないからといって、何もしないまま期限を迎える必要はありません。

相続人申告登記により、申出をした相続人について、基本的な申請義務を履行できる場合があります。

ただし、相続人申告登記は名義変更ではなく、不動産の売却や担保設定もできません。

遺産分割成立後は、その内容に基づく相続登記が改めて必要です。

茅ヶ崎市、藤沢市、寒川町、平塚市周辺で、古い相続登記、話し合いが終わっていない相続、相続人申告登記についてお困りの方は、木村光太朗司法書士事務所へご相談ください。

現在の資料を確認し、期限と選択肢を整理します。


FAQ

Q1.相続人の一人だけで相続人申告登記を申し出られますか?

はい。共同相続人の一人が、自分について単独で申し出ることができます。

他の相続人の分もまとめて代理で申し出る場合は、その相続人からの委任が必要です。

Q2.一人が申し出れば、相続人全員の義務が履行されますか?

いいえ。自分についてだけ申し出た場合、義務を履行したものとみなされるのは申出人本人です。

他の相続人は、それぞれ申し出るか、代表者へ委任して手続を行う必要があります。

Q3.相続人申告登記をすると、不動産は自分名義になりますか?

なりません。相続人申告登記は、所有権の移転や持分を公示する登記ではありません。

正式な名義変更には、別途、相続登記が必要です。

Q4.申告登記をした不動産を売却できますか?

相続人申告登記だけでは売却できません。

売却するには、遺産分割等を整え、取得者への相続登記を行う必要があります。

Q5.遺産分割が成立した後も、申告登記のままでよいですか?

いいえ。遺産分割によって不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に、その内容に基づく相続登記を申請する義務があります。

Q6.相続人申告登記に登録免許税はかかりますか?

申出に登録免許税はかかりません。

ただし、戸籍等の取得費用、郵送料、司法書士へ依頼する場合の報酬などは別途必要です。

Q7.2027年3月31日を過ぎると、すぐ過料になりますか?

期限経過と同時に自動的に過料が科される仕組みではありません。

法務省は、登記官が義務違反を把握した場合には、原則としてまず催告する運用を示しています。

ただし、正当な理由なく義務に違反すれば10万円以下の過料の対象となる可能性があるため、期限前の対応が重要です。

一次情報・出典

公開日・最終更新日:2026年10月5日
執筆・監修:司法書士 木村光太朗(木村光太朗司法書士事務所)